20211106:クッキーを焼けない
一か月前の出来事。
正確には覚えていないけど、大体それくらい前の話。
特に理由もなくsteamを開くと珍しく通知欄に赤い表示が出ていた。
外国人からのフレンド申請かと思い、ため息をつきながら開くと、
そこには友人からの一言とクッキーのアイコンが表示されていた。
クッキークリッカーという、数年前に一世を風靡したブラウザゲームが存在する。
自分はやったことがないため詳細は分からないが、クリックをすることでおばさんがクッキーを焼き続け、ひたすらにクッキーの数を増やすというゲームらしい。
聞くだけでは大して面白くもなさそうだが、なぜかツイッターを中心としたインターネットの人間の心を鷲掴みにしたらしく、自動クリックなどのツールを使うものも現れ始めたという。
そんなゲームが今年、突然steam版を配信し始めたということは知っていた。
いつもたむろしているdiscordのサーバーではクッキークリッカー専用のチャンネルが設立され、何人もの友人が朝から晩まで誰にあげるでもなくクッキーを焼き続けていた。
時間とマウスの耐久力を奪う魔力を持った仮想クッキー作り体験、それを体験する権利が突然、自分にも送られてきたのだ。
そして今自分が何をしているかというと、特に何もしていない。
ただ仕事をして、オーバーウォッチというFPSを数試合やって寝る。
それだけの日々だ。
友人がお金を払ってまで、一生分のクッキーを焼く機会をくれたのに一枚も焼いていない。
新しいものを始めるのは疲れる。
まだ20代前半、職場では若者扱いされる自分だがこう感じることが非常に増えてきている。
仕事のせいか、今やっていることに精一杯だからかはわからない。
原因が分かったところで解決しようと思える体力も残っていない気がする。
友人に毎日のように勧められていたペルソナ5も1度起動したきりプレイできていない。
その間にコントローラーには埃が積もっていき、次にやるときの面倒が増えていく。
オーバーウォッチは習慣がついているのと、試合で放出されるドーパミンに中毒になっていること、試合という区切りによる辞め時のわかりやすさで続いているのだと思う。
イントロが長い音楽を嫌ったり、ファスト映画を好む若者が増えていると噂される現代社会。
そういう人間を今まで馬鹿にしてきたが、気づかない間に自分もそちら側に足を突っ込んでいたと思うと些かショックだ。
そして人生の先駆者たちが言っている言葉「年を取っていくほど新しいことを始める力が無くなる」も自分の焦りに拍車をかける。
気づけば若者と呼んでいいのか分からない、曖昧な境界線の上に立っていた事に気付いたなら、新しいことをまだ体験したいと思っているなら、多少無理をしてでも知らない海に飛び込むのも大切だろう。
ひと泳ぎして疲れたら、焼き立てのクッキーを食べながらオーバーウォッチをやればいい。